2011年04月12日

ヒブ、肺炎球菌ワクチン再開にあたって

(2011年10月01日追記)
小児科だより10月号にも関連記事があります。
あわせてお読みください。

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最終的な選択は医療を受ける立場の方にありますが、医療側がさらに判断材料を提供することが必要と考え、当院としてあらためて詳しくご説明することにいたしました。


<これまでの経緯と'素朴な疑問'>

今年3月に、ヒブワクチンと小児用肺炎球菌ワクチン接種後に7人の死亡があったことが報告されました。
このことを受けて、厚生労働省が調査と検討を行った結果、これらのワクチンと死亡7人との間には「現時点では直接的な明確な因果関係は認められない」、と結論されました。

この結論の結果、4月1日よりこれら2つのワクチンの接種再開が決まりました。
同時接種についても、死亡との間に因果関係は認められず、今まで通り医師の判断により同時接種を行ってよい、となりました。

しかし、はたして今まで通りこれらのワクチンを接種したり同時接種を行ってよいか、迷われる方が多いと思います。
厚生労働省の「現時点では直接的な明確な因果関係は認められない」という見解だけでは、接種の判断を行うためには必ずしも十分な説明ではないと思います。


<厚生労働省の報告結果「小児用肺炎球菌ワクチン、ヒブワクチンの安全性の評価結果について」平成23年3月24日 の解説>

・亡くなったお子さんの状況
 年齢:6ヶ月未満〜2歳台 基礎疾患あり3例、明確でないもの4例
 接種から死亡までの期間 翌日3例、2日後1例、3日後2例、7日後1例
 同時接種(全例):プレベナー+ヒブ:1、プレベナー+DPT:1、プレベナー+ヒブ+DPT:2、ヒブ+BCG:1、ヒブ+DPT:2

・接種後の死亡の頻度:2つのワクチンとも0.1~0.2/10万接種
・海外の接種後の死亡との比較:
 海外:小児用肺炎球菌ワクチン:0.1~1/10万接種
    ヒブワクチン:0.02~1/10万接種
・原因:感染症と乳幼児突然死症候群が原因の大半
    いずれもワクチンとの因果関係は明確ではない。

・同時接種:866医療機関の調査(当院を含む)
      2つのワクチンは同時接種が75%以上

同時接種による副反応出現率は、単独接種に比べて高い傾向(メーカー)と同じ(鹿児島大学)という2つの調査結果があるが、重大な副反応の増加はない。

・結論:
現段階の情報において、いずれもワクチン接種との直接的な明確な因果関係は認められないと考えられる。
死亡の頻度は、海外と比較して多くはない。
今まで通り、2つのワクチンの接種を再開する。同時接種も今まで通りとする。
しかし今後死亡が0.5/10万接種を超えた場合は、因果関係が有る無しにかかわらず再検討する。


〜なぜ因果関係が認められないとなったのですか?

ワクチンの副反応による死亡はアナフィラキシー反応がほとんどだからです。
アナフィラキシー反応は重大な全身のアレルギー反応で、接種後15〜30分以内に出現します。まれに遅れて出現する場合でも数時間以内です。
今回の7例はいずれも接種後1日以上経過していることと、症状が異なることからアナフィラキシー反応とは考えられません。
また他のまれで重大な副反応もほぼ考えられない状況です。
(アナフィラキシーについては、早期発見と対処が大切なので、後で詳しく説明します。)


〜なぜ厚生労働省の説明ははっきり結論を言わないのですか?

医療の世界は、世の中の他のことと同じように「絶対」がないからです。
現在の医療の常識ではあり得ないことと考えられても、結論が変わることが絶対ないとは言い切れません。
しかし、今回の厚生労働省の結論は、現在の医療の判断ではワクチンとの因果関係はほぼありえないというもので、現状では否定されていると考えてよいと言えます。
この結論をもって接種を再開してよいと私は考えます。


〜ワクチン接種の副反応には、どんなものがあるのでしょうか?

<「平成22年12月6日 厚生労働省の検討会でのヒブワクチンと肺炎球菌ワクチンの副反応の検討」の解説>

・ヒブワクチン(2008 12月〜2010 10月の検討) 140万人接種(推定)
 副反応報告 58人(関連性が否定されたものを含む)
 発熱8 熱性けいれん9 アナフィラキシー5(他にアナフィラキシー様反応2:アナフィラキシーは否定)
 アナフィラキシーはすべて回復した ギランバレー・ADEM様反応2名は関連性は否定

・小児用肺炎球菌ワクチン 2010 2月〜2010 10月の検討 70万人接種(推定)
 副反応報告 64人(関連性が否定されたものを含む)
 発熱17 アナフィラキシー様反応2(アナフィラキシーは否定)

以上のように、接種開始から昨年10月までの報告では、生命にかかわる重大な副反応はありませんでした。 

ワクチンの副反応は、大部分が発熱と接種部位の腫脹(はれ)です。
この副反応は、ほぼ全例が自然に数日以内に治りますので、とくに治療は必要ありません。めったにないが重大な副反応は、アナフィラキシーです。 

・アナフィラキシー:
即時型アレルギー反応の重大な症状である、呼吸器(喉頭浮腫、喘鳴、呼吸困難)や循環器症状がおこったものです。
緊急の治療が必要で、死亡することもあります。
蜂アレルギーが一番多いが、まれ(年間数例以内)に食物や予防接種でもおこります。


〜接種後に死亡した7例の死因は、予防接種が原因でなかったら何でしょうか?

外国の報告では、大半の原因は感染症と乳幼児突然死症候群とされています。
今回の7例はいずれも原因が明確になりませんでしたので、感染症が原因ではないと推測されます。
厚生労働省の報告では、乳幼児突然死症候群に触れられていませんが、可能性として考えられます。
乳幼児突然死症候群は、乳幼児の原因不明の死亡に対してつけられた診断名です。
突然亡くなって原因がわからなかった乳幼児の診断の総称で、心臓の病気や窒息など隠れたいろいろの原因があると推定されています。

予防接種をおこなわない場合でも、自然に一定の割合で乳幼児の原因がわからない死亡が見られます。
今回のヒブワクチンと小児用肺炎球菌ワクチン接種後の死亡例の頻度は、接種をしなかった場合の自然の死亡の頻度を明らかに上回ることがなかったため、ワクチンが隠れた原因になっていることは考えにくいというのが、今回の結論でした。

はっきりと結論を言うことはできませんが、乳幼児突然死症候群が原因の1つとして推定されます。


〜接種後の死亡や重大な副反応を防ぐにはどうしたらよいですか?

今回報告されたような死亡を防ぐ手段は残念ながらありません。
しかし、いいかえれば接種をしなくても、乳幼児の死亡は同じ割合で起こるのです。
接種を中止する理由にはならない、と考えてください。

ワクチン接種との関係がはっきりしている重大な副反応であるアナフィラキシーの対処はあります。

アナフィラキシーは、ワクチン接種後15〜30分にほとんどがおこるため、接種後はしばらく医療機関内に留まって、症状が出始めたらすぐに医療機関が対処する体制をとります。帰宅しても疑わしい症状が出たら、すぐに引き返して医療機関に申し出てください。
迅速な処置でほとんどが救命されます。

・アナフィラキシーの症状

皮膚(一番多い):じんましん、浮腫(口唇や眼瞼周囲や手足のむくみ)、かゆみ、ほてり、紅斑
 
眼:充血と浮腫(眼球と眼瞼)、かゆみ、涙
 
呼吸器(重大):くしゃみ、鼻汁・鼻閉、咳、のどの違和感・声がれ・浮腫、喘鳴(ゼーゼー)、呼吸困難
 
循環器(重大):血圧低下、不整脈、意識障害

消化器(食物アレルギーには多いが、注射では非常に少ない):腹痛、悪心(気持ちが悪い)、嘔吐、下痢、口内の違和感


〜同時接種をしないほうが安全ですか?

厚生労働省の報告では、重大な副反応は同時接種で増加しませんでした。
発熱などの軽度の副反応は増加することはありえますが、同時接種を中止するほどのものではないと言えるでしょう。
ヒブ、肺炎球菌ワクチンは5歳未満まで公費助成が受けられますが、出来るだけ月齢が小さいうちに受けていただきたいものです。
ワクチンの種類が増えて、単独接種ですべてのワクチンをスケジュール内に行うのは困難になっていることから、小児科医としては同時接種をお勧めいたします。


〜あらためて、
ヒブワクチンと小児用肺炎球菌ワクチンは接種した方がよいでしょうか?

ヒブと肺炎球菌は、乳幼児の重症感染症の代表です。
どちらも年間300〜600人の乳幼児の命を奪い、同じ人数の後遺症を残します。
当院でも数名の感染者を経験しています。

初期症状に細菌髄膜炎に特有なものはなく早期発見が困難であること、最近は抗生剤が効きにくい耐性菌が増えていることを考えると、予防が最善の対策といえます。

接種後の死亡例とワクチンとの因果関係が認められず、また感染によってはるかに多い人数の死亡例があることを考えますと、接種することの利益が接種しないことの利益を上回ります。
 

《結論》

2つのワクチン接種をお勧めいたします。
より有効とするため、同時接種をお勧めいたします。

posted by kuyama at 10:27| 予防接種ご説明 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年04月05日

ヒブと小児用肺炎球菌ワクチンの予診票について

生後2ヵ月以上5歳未満の方は、公費助成が受けられます。
市町村の予診票が必要です。

*印西市民の方は、当院にあります。
 できるだけ事前に取りにおいでください。
 無料で受けられます。

<対象者と接種回数>

【ヒブワクチン予防接種】

 @生後2か月〜7か月未満(4回接種)

 A生後7か月〜12か月未満(3回接種)

 B生後12か月〜5歳未満(1回接種)


【小児用肺炎球菌ワクチン予防接種】

 @生後2か月〜7か月未満(4回接種)

 A生後7か月〜12か月未満(3回接種)

 B生後12か月〜24か月未満(2回接種)

 C生後24か月〜5歳未満(1回接種)


*印西市以外の方
 お住まいの市町村にお問合せください。

posted by kuyama at 13:57| 予防接種ご説明 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年04月02日

小児科だより04月号(No134/2011/04)

プレゼント今月の記事
◆ヒブ・小児用肺炎球菌ワクチン
 〜4月より接種再開、公費助成も

◆地域ではやっている病気

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posted by kuyama at 17:08| くやま小児科だより・ブログ版 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする