2011年05月24日

病気のときの受診の目安

くやま小児科医院を利用される皆さまへ(2)
 〜病気のときの受診の目安


ほとんどの症状は生体防御に必要で、医療は自然治癒力を引き出す程度がよいことが多いです。
受診を迷われたときのために、次のよくある症状の目安をご参考にしてください。


1)発熱

発熱1〜2日は通常緊急性はない。
元気なら高い熱でも翌日まで待てる。3〜4日続く熱はかぜにはよくある。

<注意する発熱>

生後6ヶ月以下、元気がない、嘔吐を伴う、水分を取らない、意識がおかしい、けいれんがある


2)咳 

咳は気道の病原体や痰や異物を排泄するための生体防御反応。咳を止めると、排泄が減少して、下気道(気管支や肺)に炎症が進行することが多い。
咳は止めないほうがよい場合がほとんど。
喘息も痰の排泄が悪くなることで呼吸困難は悪くなる。
症状を隠すことは病気の進行を見逃す原因となる。

・咳を止めない方がよい場合(痰と病原体の排出):喘息、上気道炎、気管支炎、肺炎
・咳を止めた方がよい場合:クループ、喉頭蓋炎、百日咳 特徴的な咳で診断

 大部分は止める必要のない咳。原因治療をすることで結果的に咳を鎮める。


3)嘔吐

最初の数時間から半日過ぎれば、たいていの嘔吐は止まる。嘔吐は毒物を出すための防御反応。

<脱水を防ぐ水分の取らせ方のコツ>

・少しずつ(5〜10ml、スプーン1~2さじずつ)を頻回に与えること。
・ 子どもは一度にたくさん欲しがるので、要求に負けないこと!
・ 1回大量投与は嘔吐を繰り返させて、かえって脱水をひどくする。
・ 飲ませるのは、通常は、湯冷ましや麦茶などでよい。

スポーツドリンクは糖分が多いのでよくない。

♪自宅で簡単にできるイオン水の作り方

  湯冷まし 1リットル
  砂糖   大さじ4+1/2(40g)
  食塩   小さじ1/2(3g)                   


4)下痢

通常の腸炎では下痢は止めないほうがよい。
細菌性胃腸炎でもウィルス性胃腸炎でも病原体を排出することで改善。
強い下痢止めの薬は使うことはない。 
感染性胃腸炎では、下痢が止まっても1ヶ月程度便からウィルスが排泄される。
感染力がなくなるのを待つと1ヶ月も登園できなくなるので、登園目安は元気になった時でよい。

<下痢の時の食事>
最近のアメリカでの研究では腸粘膜の再生のためには、早めに食物を与えたほうが再生の刺激になって、結果的に改善が早まることがわかった。
以前はおかゆからはじめて徐々に普通食にしていたが、今はその必要なし。
食べさせようとする余り、お菓子や甘いものを与えてると、習慣化して食生活を乱す。
食欲がなければ本人の食べる量に合わせた少しづつの補給で十分。


5)頭部外傷

頭を打って強い頭痛や嘔吐があるとき、けいれんや様子がおかしいとき、受診。
1日様子が変わらなければほとんどが大丈夫。
しかしまれに4〜5日たって脳内出血をおこすこともある。
80cm以上の高さからの転落は要注意。  
                                 
6)喘息

ゼーゼーしたり、呼吸が苦しいときは受診。
夜間息苦しいときは救急を受診。
よく眠れているときは翌日でもよい。
大切なのは症状をとることではなく、発作を繰り返さないような根気のいる日頃の治療。


7)けいれん

大部分は熱性けいれんで、緊急性はない。
熱性けいれんは7%の子どもにおこり、一生に1回だけが半分。
熱性けいれんは、脳に後遺症は残さず5歳以上になるとほとんどが卒業する。
10分くらい続くとき、意識がしばらく戻らないときはすぐ受診。
でも数分以内で止まって意識がすぐ戻るときは救急車で受診する必要はない。
呼吸が止まったように見えるが、実は呼吸していて10分以内のけいれんでは酸素不足にはならない。口にものを入れて開ける必要はない。
はじめてのときはとても心配になるので、病院で確認してもらうとよい。

<熱性痙攣への予防薬(ダイアップ)投与について>

熱性痙攣予防のため、発熱初期にダイアップ座薬を投与する方法があります。
現在投与されている方は多いですが、小児科では近年しだいに使われなくなってきました。

理由:
・熱性痙攣はたとえ起こっても脳に後遺症はないので、予防はかならずしも必要ではない。
・一生に1回だけの人が半分、2回が1/4、3回以上が残り1/4で、1度起こした人
 でも、今後起こさない場合が多い。
・4〜5歳になればほぼ全員が卒業して起こさなくなる。
・発熱初期のタイミングを見つけるのがむずかしくて、有効に使用できないことが多い。
・眠気やふらつき、興奮などの脳機能抑制効果(よっぱらった状態)がめだつ。

しかし、小児科以外では処方されることがあります。
かならずしも必要ではないが、保育や幼稚園現場では指示通りが無難。

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当院の治療方針について

くやま小児科医院を利用される皆さまへ(1)
 〜当院の治療方針について


子どもは生まれてきて、外界のさまざまなウイルスや細菌に感染し、免疫をつけていきます。
3歳くらいまでに、何度も風邪をひいたりお腹をこわしたりするのは、当たり前のことなのです。
むしろ、過度に衛生的で感染症を忌避する傾向は、アレルギーを助長するなどの弊害も指摘されています。
もちろん、重症化や合併症を早く見つけて治療することは重要です。
しかし、ほとんどのウイルス感染症は原因を除く薬はなく、自然治癒を待つしかありません。
症状をやわらげ、見守ることが基本になります。
この考えに基づく当院の治療方針を具体的に書きましたので、ぜひお読みください。


1)身体の防御反応を除去しない 

 ・感染症の症状は治るために有益な反応です。
 ・風邪の経過は意外に長いものです。

風邪などの感染症になると、身体は治すための防御反応をおこします。
発熱、咳、鼻汁、下痢などの症状は、身体からウィルスや細菌などの病原体や有毒物を外に出す有益な防御反応です。
防御反応が収まるのには、時間がかかります。
風邪の症状が消える期間は、1週間で5割、2週間で9割と、期待するよりかなり長いことが調査で確かめられています。

当院では、症状を消す薬より原因を取り除く薬による治療を中心にします。
風邪の治療は咳や鼻汁を止めるのではなくて、病原体を出しやすくする去痰剤を原則にします。
しかし、嘔吐のように脱水をおこして身体に有害なことがある症状は、消す治療をおこないます。

 
次の薬は原則使いません。
中枢性鎮咳薬(アスベリン、メジコン、フスコデ):咳反射を抑える薬

抗ヒスタミン剤(ペリアクチン、ポララミン):痰の粘度を増して出しにくくしたり、眠気をおこすことがあります。しかし脳への移行が少ない第2世代抗ヒスタミン剤は使用します。

腸運動抑制薬(ロペミン):腸の働きを抑える薬です。腸粘膜は活動するほうが回復が早くなりますし、有害物を早く除去します。

                                   
2)熱を下げない

熱も免疫を高めて病原体に対抗する防御反応です。
41〜42℃までは身体に有害ではありません。熱を下げないほうが早く治ります。
むかし熱で頭がおかしくなると言われたのは、脳炎がめずらしくなかったためです。
熱が脳炎をおこすことはなく、脳炎が熱を伴うだけです。

解熱剤を使う場合:
 高熱の経験が少なく心配なとき:備えれば安心ですが、熱に慣れれば使わなくてよいです。
 熱のため脱水や消耗が強い:めったにありませんが、まれに使います。
 身体に有害な高熱:熱中症などですが、ほとんどの人は一生経験しません。


3)抗生剤の使用を少なくする

感冒の原因のうち、抗生剤の効く細菌感染は2割だけで、残り8割は抗生剤の必要ないウィルス感染です。日本は世界の標準よりはるかに多くの抗生剤が使われていますが、不必要な使用が多くあります。当院では、必要をしぼって抗生剤使用を少なくする方針をとります。

<抗生剤の使い過ぎの好ましくない点>

・正常の身体の菌(乳酸菌など)を減らす
 
身体には有害な菌よりはるかに多くの無害な菌と有益な菌があります。有害な菌を減らす抗生剤は、無害な菌と有益な菌を減らして、菌のバランスをくずしたり、強力な有害な菌が増える原因になることがあります。

・耐性菌を増やす

抗生剤を使いすぎると、突然変異をおこした抗生剤の効かない菌(耐性菌)が増えやすくなります。
日本を含めた世界中で、耐性菌は覚えきれないほど種類が増えてきました。
(BLNAR,MRSA,VRSA,MRAB,NDM-1,KPC,ESBLなど)
すべての抗生剤が効かない菌による死亡例も、しだいに増えています。
  
  
抗生剤使用の方針

緊急性の少ない感染症は、初めは原則抗生剤を使いません。
抗生剤が必要か確認するために、検査の必要性が高い場合(乳児、長引く発熱、基礎疾患がある、など)は検査を積極的に行います。
                               

4)迅速検査を使う

感染症の治療方針を早く立てるために、10〜20分で判定できる迅速検査を積極的に使用します。来院時に結果のわかる迅速検査は、抗生剤の使用を決めるのに有用です。
 
迅速検査の種類

 白血球とCRP
 迅速キット(インフルエンザ、溶連菌、アデノウィルス、RSウィルスなど)、尿検査



5)感染症に使用する薬

・感冒(気道感染症)

痰を出しやすくする薬(ムコダイン、C−チステン、ムコソルバン、プルスマリンA、塩酸アンブロキソールなど)
気管支を広げる薬(メプチン、ホクナリンなど)
免疫を高める漢方薬(麻黄湯、葛根湯、小柴胡湯、小柴胡湯加桔梗石膏など)

・胃腸炎

整腸剤(ビオフェルミンなど)正常細菌を増やす作用
吐き気を抑える薬(ナウゼリン)
漢方薬(五苓散、黄連湯、半夏瀉心湯など)
posted by kuyama at 10:15| 当院の治療方針など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年05月02日

小児科だより05月号(No135/2011/05)

プレゼント今月の記事
◆あらためて・・・
 小児科で診る病気

◆地域ではやっている病気

〜〜〜


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posted by kuyama at 08:09| くやま小児科だより・ブログ版 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする