2021年01月21日

医療におけるコミュニケーション 〜食い違いの経験から<くやま小児科だよりNo245/2021/01>

皆さまは医師や看護師と話していて、思いが伝わらず(食い違い)悲しい気持ちになったり、不快になった経験はないでしょうか。
私は小さなものも含めて数え切れないほど食い違いを経験してきて、そのたびに試行錯誤してきました。
最近「米国緩和ケア医に学ぶ 医療コミュニケーションの極意」という本を読んでいていろいろと発見をしましたので、今回は私の例からお話します。

<経験した事例>
個人情報保護のため、一部改変しています。

1)熱を繰り返す子
保育園に通う3歳の男の子が熱で来院されました。
今までも熱を繰り返していて、今回は一週間前に治ったばかりの再度の発熱でした。来院時お母さんは切羽詰まった様子で、「また熱を出してしまった。熱を繰り返すのをなんとかしてくれませんか」と話されました。
私は「保育園に通っていれば最初の2〜3年は免疫がないので、熱を繰り返すのは防げないですよ」と説明しましたが、納得できなくて、なんとかならないか、と繰り返されました。私が最後にどうにもできないですね、と話すと、お母さんは「もういいです」と強く言い放って席を立ちました。それ以来その男の子が来院することはありません。

2)検査をしてください
インフルエンザの季節に、発熱した幼稚園児。
親御さんはインフルエンザ検査を希望しました。熱が出た直後で正確な結果が出る時期ではなく、本人が元気で治療の必要がなさそうなので、私は検査をする必要はないですよ、と説明しました。でも親御さんは検査を繰り返し求めてきて、最後に「私が希望しているのにしないのはおかしいでしょう。もうここには来ない。」と仰いました。

3)学校でのトラブルで来院したお子さん
「私の子がトラブルを起こして困ると級友や担任から言われて、医療機関で診断をもらうように言われて来ました」と父親がお子さんを連れて受診しました。
お子さんの日常行動や学校でのいきさつを伺うと、コミュニケーションや発達に問題がある可能性があると思われました。そこで「お伺いしたお子さんの様子からですと、行動や発達について詳しく調べたほうがよいと思います。よろしければ専門医療機関を紹介します」とお話しました。
すると父親は「私は学校に言われて来ただけだ。うちの子は正常だから、そんな診断を受ける必要はない」と言って私の話をそれ以上聞かずに帰られました。

<医療の場でのコミュニケーション>

1)コミュニケーションの内容には事実と感情の2つがある

通常、診察の場面では、主に病名と検査、治療の方針、今後の見通しなどの事実を扱っています。
私の医学部や病院勤務時代には、そうした事実をいかに正確にわかりやすく伝えるかのコミュニケーション技術が学習の中心でした。
しかし患者の立場になってみると、事実だけではけっして十分ではないことがわかります。それは病気ということを事実だけでなく、不安や生活上の心配など、様々な感情とともに受け止めているからです。
事実の説明だけされて、医師の説明を冷たいと感じたり、ではどうしたらいいのと思ったことが皆さんにはなかったでしょうか。
私自身も患者の立場になったとき、気持ちを理解してくれないと思ったり、反対にわかってもらって嬉しかったという経験があります。
上にあげた本の中で、著者はこのことを、医療者と患者のコミュニケーションでやりとりされるのは「認知データ」と「感情データ」の2つである、と説明しています。「認知データ」というのは事実の情報で、病気の説明などです。「感情データ」というのは感情の情報で、嬉しい、悲しい、怒り、などです。
人は事実と感情の両方を納得した後で初めて行動できます。医療者が事実だけを説明すれば十分と考えてしまうことが食い違いの大きな原因だと言っています。

2)医師の態度

医療者が患者に取る態度は3種類あります。
それは、医療者が患者に一方的に指示する「家父長的」、事実だけを伝える「情報提供的」、事実と感情の2つを互いに交換する「共感的(了解的)」です。

「家父長的」態度は、医師が方針を決定して、患者はその方針に原則従うというものです。今は患者の意向が尊重されるべきとの考え方が一般になったので減りましたが、以前は当たり前だった態度で、今もまだ見られます。

「情報提供的」態度は、医療者が中立の立場で事実の情報だけを提供するもので、決定はすべて患者の側とするものです。
現在はこれが主流になってきています。

「共感的」態度は、医療者と患者が医療情報と感情の両方を対等の立場で交換するもので、方針決定は共同作業によって行われます。
終末医療など治癒が見込めない病気の数多い研究の結果から、「共感的」態度が患者と家族の生活の質にとって最も良い効果があることがわかってきて、現在の医療に広がりつつあります。「共感的」態度は、実は日常生活の良好なコミュニケーションそのものでもあり、終末医療だけでなくすべての日常医療に必要なものです。
私もある程度は実践してきましたが、改めて意識して行う必要があると今回学びました。
最初にあげた3つのトラブルも「共感的」態度であれば食い違いが起こらなかったと思います。

<どうして食い違いがおきたのでしょうか>

最初の3つの事例でお話します。
私は、それぞれ親御さんがどのような理由や背景から質問したり希望したのかを、初めに気持ちも含めてよく聞く必要があったのです。
たとえば家事や仕事で追い詰められていたり、学校のトラブルがお子さんが理由ということに納得していないで来院した、などです。
私はそうした相手の考えや気持ちを聞かずに、最初に専門家として最良と思う方針を説明しましたが、なにが最良かは人によって異なります。患者さんが自分の気持ちや考えを話し、それに対して私の考えを重ね合わせたら、しだいに納得のいく方針にたどりついたのではないかと思いました。結果として私の方針に決まる場合があるかもしれませんが、それは患者さん側の気持ちも含めた納得があってのことです。

慌ただしい診療の中で、ともすれば患者さんの思いや受け止めを確認しきれないこともあるかもしれません。しかしそれを言い訳にせず、常に柔軟な態度でいたいものだと思います。
これからも医療技術だけでなく、医療コミュニケーションの勉強も続けていかなければ、と思い返す良い機会でした。
posted by kuyama at 15:12| くやま小児科だより・ブログ版 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年01月18日

同時接種割引終了のお知らせ

当院では、多くのワクチンが自費で行われていた頃から、少しでもご負担を減らし、子どもたちにワクチンを受けてほしいと願い、同時接種割引を行ってまいりました。
その後ヒブ、肺炎球菌、B型肝炎、水痘が公費になり、高額のロタワクチンも昨年ようやく定期接種になりました。
そこで2021年3月末をもって、この割引を終了とさせていただきます。

ご理解を賜りますよう、よろしくお願いいたします。

posted by kuyama at 09:31| お知らせ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする