2011年05月24日

当院の治療方針について

くやま小児科医院を利用される皆さまへ(1)
 〜当院の治療方針について


子どもは生まれてきて、外界のさまざまなウイルスや細菌に感染し、免疫をつけていきます。
3歳くらいまでに、何度も風邪をひいたりお腹をこわしたりするのは、当たり前のことなのです。
むしろ、過度に衛生的で感染症を忌避する傾向は、アレルギーを助長するなどの弊害も指摘されています。
もちろん、重症化や合併症を早く見つけて治療することは重要です。
しかし、ほとんどのウイルス感染症は原因を除く薬はなく、自然治癒を待つしかありません。
症状をやわらげ、見守ることが基本になります。
この考えに基づく当院の治療方針を具体的に書きましたので、ぜひお読みください。

なお、当院では原則として内科の患者さんは診療いたしませんが、授乳中のお母様の薬のご相談も含めた診療についてはお受けしております。


1)身体の防御反応を除去しない 

 ・感染症の症状は治るために有益な反応です。
 ・風邪の経過は意外に長いものです。

風邪などの感染症になると、身体は治すための防御反応をおこします。
発熱、咳、鼻汁、下痢などの症状は、身体からウィルスや細菌などの病原体や有毒物を外に出す有益な防御反応です。
防御反応が収まるのには、時間がかかります。
風邪の症状が消える期間は、1週間で5割、2週間で9割と、期待するよりかなり長いことが調査で確かめられています。

当院では、症状を消す薬より原因を取り除く薬による治療を中心にします。
風邪の治療は咳や鼻汁を止めるのではなくて、病原体を出しやすくする去痰剤を原則にします。
しかし、嘔吐のように脱水をおこして身体に有害なことがある症状は、消す治療をおこないます。

 
次の薬は原則使いません。
中枢性鎮咳薬(アスベリン、メジコン、フスコデ):咳反射を抑える薬

抗ヒスタミン剤(ペリアクチン、ポララミン):痰の粘度を増して出しにくくしたり、眠気をおこすことがあります。しかし脳への移行が少ない第2世代抗ヒスタミン剤は使用します。

腸運動抑制薬(ロペミン):腸の働きを抑える薬です。腸粘膜は活動するほうが回復が早くなりますし、有害物を早く除去します。

                                   
2)熱を下げない

熱も免疫を高めて病原体に対抗する防御反応です。
41〜42℃までは身体に有害ではありません。熱を下げないほうが早く治ります。
むかし熱で頭がおかしくなると言われたのは、脳炎がめずらしくなかったためです。
熱が脳炎をおこすことはなく、脳炎が熱を伴うだけです。

解熱剤を使う場合:
 高熱の経験が少なく心配なとき:備えれば安心ですが、熱に慣れれば使わなくてよいです。
 熱のため脱水や消耗が強い:めったにありませんが、まれに使います。
 身体に有害な高熱:熱中症などですが、ほとんどの人は一生経験しません。


3)抗生剤の使用を少なくする

感冒の原因のうち、抗生剤の効く細菌感染は2割だけで、残り8割は抗生剤の必要ないウィルス感染です。日本は世界の標準よりはるかに多くの抗生剤が使われていますが、不必要な使用が多くあります。当院では、必要をしぼって抗生剤使用を少なくする方針をとります。

<抗生剤の使い過ぎの好ましくない点>

・正常の身体の菌(乳酸菌など)を減らす
 
身体には有害な菌よりはるかに多くの無害な菌と有益な菌があります。有害な菌を減らす抗生剤は、無害な菌と有益な菌を減らして、菌のバランスをくずしたり、強力な有害な菌が増える原因になることがあります。

・耐性菌を増やす

抗生剤を使いすぎると、突然変異をおこした抗生剤の効かない菌(耐性菌)が増えやすくなります。
日本を含めた世界中で、耐性菌は覚えきれないほど種類が増えてきました。
(BLNAR,MRSA,VRSA,MRAB,NDM-1,KPC,ESBLなど)
すべての抗生剤が効かない菌による死亡例も、しだいに増えています。
  
  
抗生剤使用の方針

緊急性の少ない感染症は、初めは原則抗生剤を使いません。
抗生剤が必要か確認するために、検査の必要性が高い場合(乳児、長引く発熱、基礎疾患がある、など)は検査を積極的に行います。
                               

4)迅速検査を使う

感染症の治療方針を早く立てるために、10〜20分で判定できる迅速検査を積極的に使用します。来院時に結果のわかる迅速検査は、抗生剤の使用を決めるのに有用です。
 
迅速検査の種類

 白血球とCRP
 迅速キット(インフルエンザ、溶連菌、アデノウィルス、RSウィルスなど)、尿検査



5)感染症に使用する薬

・感冒(気道感染症)

痰を出しやすくする薬(ムコダイン、C−チステン、ムコソルバン、プルスマリンA、塩酸アンブロキソールなど)
気管支を広げる薬(メプチン、ホクナリンなど)
免疫を高める漢方薬(麻黄湯、葛根湯、小柴胡湯、小柴胡湯加桔梗石膏など)

・胃腸炎

整腸剤(ビオフェルミンなど)正常細菌を増やす作用
吐き気を抑える薬(ナウゼリン)
漢方薬(五苓散、黄連湯、半夏瀉心湯など)
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posted by kuyama at 10:15| 当院の治療方針など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする