2011年11月04日

小児科だより11月号(No141/2011/11)

プレゼント今月の記事

◆RSウイルス感染症のお話
 〜感染症は恐れすぎず、あなどらず

〜〜〜

胃腸炎(ロタ、ノロ)、インフルエンザとならんで冬の感染症の代表で、乳幼児の気管支炎や肺炎の原因になりやすいことで知られているRSウイルス感染症。
10月に流行したことでマスコミで取り上げられ、不安になった方もおられるかもしれません。
でも、これは新しい病気でも珍しい病気でもありません。この病気のお話をとおして、感染症とのつき合い方を考えてみましょう。


<2歳までにほぼ100%の人がかかります>

生後まもなく〜1歳までに50〜70%、2歳までにほぼ100%。1度の感染では十分な免疫がつきませんが、繰り返すうちにしだいに軽症になります。
初めての感染は比較的重くなりやすいですが、それでも70%は発熱、鼻汁、咳など風邪症状だけの軽症で、数日で回復します。
残りの30%は気管支炎、肺炎になり、3%くらいが入院します。日本では年間2〜3万人の入院があります。


<軽症が多く、流行を防ぐことはできません>

冬に多いですが1年中見られる感染症で、大部分の軽症の方は受診の必要もなく、気づかずに1〜3週間はウイルスを排泄するので、感染を防ぐのは不可能です。
そんな病気が注目される理由は、母乳の免疫で感染を防げないために、乳幼児が重症になりやすいからです。
6ヶ月未満の乳児の気管支炎と肺炎の原因では一番多く、乳幼児の肺炎の50%、細気管支炎の50〜90%はこの感染症です。
年長児でも、ときには重くなることがあります。


<気をつけるのはどんな時?〜重症のサイン>

・1歳前のお子さん
・咳が強く続く
・ゼーゼー(喘鳴)や苦しそうな呼吸
 (胸やお腹の筋肉を使う)
 呼吸が苦しくなったり、眠れない、飲んだり食べたりできなくなるときは要注意です。
・高熱が続く
 感染が長引いたり細菌感染が加わって重症になったサ インのことがあります。 
・多量の鼻汁
 乳幼児では鼻汁が多いのが咳やゼーゼーが重くなる原 因のことがあります。


<治療薬はあるの?>

インフルエンザのように、直接ウイルスを減らす薬はありません。
症状を軽くする薬を使ったり、吸入して呼吸を楽にしたり、細菌感染が加わるのを防いで、自分の免疫で治るのを待ちます。鼻汁吸引も有効です。
また、RSウイルスは、同じ風邪ウイルスのライノウイルスとならんで、乳幼児の喘息のきっかけになることがあるため、気管支炎や肺炎になった場合は、治療と喘息予防をかねて喘息の薬をしばらく服用していただくことがあります。


<なぜ報告が増えているの?>

流行していることは事実なのですが、迅速検査が次第に普及し、外来で簡単に感染がわかるようになったことも、報告が増えてきた理由といえます。
今年10月半ばまでは、この検査は入院患者しか保険請求ができませんでした。
現在も1歳前や特殊な場合以外は保険がききません。
当院では今年始めから検査を行っていますが、重症になりそうな場合にかぎって検査しています。
近隣で検査をする医療機関はまだわずかで、大部分は見つかっていないと推測されます。


<予防はできないの?>

免疫を身体に入れるシナジスという注射薬があります。1ヶ月すると効果はなくなるので、感染の多い10月から4月まで月1回注射を続けます。1回10万円弱と高価なものなので、リスクの高い未熟児の生後わずかな期間のみ使用が許可されています。この注射は予防接種ではないので、予防接種との期間を開ける必要はありません。


<感染症をどう捉えたらいいでしょう>

厚生労働省は、観測定点医療機関(当院も含まれています)からの報告を受け、集計を毎週公表しています。
今まで風邪としてひとくくりになっていたいくつかの病気の原因が簡単に検査できるようになり、報告数が増えているものもあります。
このような「流行」がニュースで取り上げられる時、感染するとこわい、防がなければいけない、という論調になりがちです。
ありふれた感染症は防ぎきれるものではなく、誰もがいつかはかかり、たいていは軽症です。
感染症にかかったら、「病名」にかかわらず、重くならないか症状をよく観察しつつ、症状にあったケアをして回復を助けること、これにつきます。
乳幼児はある程度感染症にかかることで免疫を育てる大切な時期だということもお伝えしたいことです。
先進国でアレルギーが増えたのは、感染の機会が減って免疫が育っていないのが原因の1つと言われています。集団生活や社会生活は成長に必要なことですので、乳児期を過ぎたら感染症を恐れて隔離することよりも、人との接触を楽しむ気持ちが大切です。



◆地域ではやっている病気

今月記事に取り上げたRSウイルス感染症は、当院では9月下旬から出始め、10月17日の週にピークとなり、その後は下火になっています。
この感染症は例年冬によくみられるので、今後も注意が必要です。
このリストにはありませんが、他にマイコプラズマとクラミジアニューモニエの感染症も目立ちました。
これから寒くなってくると、胃腸炎などもはやり始めます。


◆ちび鉛筆

10月は院内の工事が目白押しでした/節電対策に電灯をLED器具に取り替え/蛍光灯より明るくなりました/待合室の壁に扇風機を設置/夏だけでなく暖房効率にもよいとか/そしてこの地域にもついに光回線がきたので早速工事/予約パソコンの動きがよくなりました/環境が改善してすっきりです(T)
posted by kuyama at 14:13| くやま小児科だより・ブログ版 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする