2011年12月02日

小児科だより12月号(No142/2011/12)

プレゼント今月の記事

◆小児科外来の風景
 〜当院の17年をふりかえって

◆地域ではやっている病気

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今年も残りわずかとなりました。来し方をいろいろ考える今日この頃です。
当院が開院してまもなく17年、その間に2万人を越すお子さんと、その親御さんとの出会いがありました。
昔も今も親が子を思う心というのは変わらないですが、時代のいろいろなことを背景にして意識が変化してきているな、と感じることがあります。


<診察や治療に求めることの変化>

小児科にかかる最も多い理由は発熱です。
そのほとんどが軽い「カゼ」であり、特に治療しなくても自然に治るものです。
さすがに最近は「熱を下げてほしい、抗生剤、解熱剤で早く治したい」と言われることは少なくなりました。
長年「カゼに効く薬はないですよ」「熱は身体が病原体と戦っている証拠で熱そのものは有害ではない」「ウイルス感染に抗生剤は効きません、乱用は耐性菌をつくる」というお話をしてきたこと、そのようなまっとうな情報が育児雑誌やネット上でも取り上げられ、行き渡ってきた感があります。
親御さんも、薬は必要最小限がよい、と考える方が増えています。
ところが、昔より軽い症状で多くの方が受診されます。
身近に情報があふれ、症状が軽くても切実に心配され、治療を要しなくても診てもらっておけば安心ということと、医療費の負担が減ったこと等があるでしょう。
ただ、これからの世の中は、医療コストの問題も避けては通れません。
病気の観察やケア、受診の判断の仕方などをお伝えしたり、ワクチンで防げる病気についても、これまで以上に説明を積極的にしていく役割があると考えています。


<生活の質を大切にする>

昔は医療機関にそれほど「アメニティ」(快適さ、便利さなど)を求めることはなかったように思いますが、生活が豊かになり、その必要性が高まっています。
医療者自身もそのような豊かさの恩恵を受けている生活者であり、人間味のある仕事の仕方に関心が高くなっています。
医療に何を求めるかや、生活の質をどうとらえるかは、個々に様々で、価値観が多様化しています。
このことはお子さんの治療方針(特に慢性疾患など)に関わることもあり、本人や親御さんがどうしたいと思っているのかをよく伺い、選択肢を示してご一緒に考えるというスタイルが求められていると感じます。
医師とは本来「重症かどうかを見きわめ、命を助ける」という視点が第1ですが、通常の外来では発想の転換が必要と思っています。


<健診と相談の役割が増している>

「健診」というのは昔からあり、小児科医は子どもの発達を診ることを特に大切に考えています。
病気を発見するだけでなく、育児について相談したり育児に自信を持っていただく場です。
最近は祖父母とご一緒や両親そろって来られる方が増えており、健診への期待をより感じるようになりました。
ご相談のご希望も増えたので、この秋から医師の応援をお願いし、私がそれに専念できる時間を設けました。
それでも予約がいっぱいで皆さんにご迷惑をおかけしていますが、この分野は大切にしていくつもりです。
また、日常診療で十分にお話できないことを地域の講演などの機会に取り上げていますので、興味のある方は院内報などで予定をご覧になってください。


<気になること 〜清潔志向と対人関係>

生活が快適になるほど、ちょっとした症状でも気になってきます。誰しも病気にかかりたくはありません。
ただ、こどもの成長過程で、軽症の感染症にかかって免疫をつけるのは大切なことです。
3歳くらいまでに感染にかかる機会が少ないために、免疫が十分育たないのがアレルギーの原因の1つと考えられています。
カゼなどに、とにかくかかりたくないと考えたり(保育園のことなど事情は理解しますが)、感染症の症状がとても心配な方がおられますが、もう少しおおらかになってもよい、と思います。
対人関係にも同じ傾向を感じます。こどもにトラブルやけんかは経験させたくない。
しかし自分の要求を相手に合わせて調整したり、感情を形成していくことは、そのようなことから培われていくものです。
兄弟が多かったり、近所付き合いが濃厚だった以前は、そうした機会にめぐまれていました。
対人関係にも過度な「清潔志向」がないでしょうか。
私は健診のときにテレビの視聴時間をお聞きしていますが、理由は、外に出て遊ぶことで身体を動かし、いろいろな経験をしてほしいと考えているからです。
社会のなかで打たれ強くなったり豊かな人間関係を作るには、良い悪い両方の体験が必要です。
いわゆる「お勉強」は後で努力すればいくらでも追いつけますが、しっかり遊んで、将来にわたる生きる力に必要な、基本的な体験を積んでおくことは、小さい時にやっておかないと取り返しがつかないと思います。
ちょっと辛口なお話もありましたが、日常の診療で感じていることを書かせていただきました。
   

◆地域ではやっている病気

秋口から流行が話題になったRSウイルス感染症は下火になっていますが、本来冬に多いので、今後も要注意です。
またこのリストにはありませんが、マイコプラズマ感染症が全国的に空前の流行で、この地域でもとても多いです。抗生剤で治療を行いますが、これが効きにくくなっており、長引くケースが増えています。
またこれからは吐き下しのカゼ(ウイルス性胃腸炎)の季節でもあります。
下痢の場合は食べ物は通常どおりでかまいません。吐き気が強いときは、水分を一さじから少しずつ、だましだましとり続けるのが、脱水を予防するコツです。 


◆ちび鉛筆

インフルエンザ予防接種を希望された皆さま/接種は無事済まされたでしょうか/例年キャンセルの多いインフルエンザですが/今年はあまり動きがなく予約の融通が難しく/ご不便をおかけした方もありました/今年は一杯になった時点で締め切らない方式で/結果としては昨シーズンより多くの方にご利用いただけました/一長一短あり難しいですが/動向を分析して来年に生かしたいと思います/それではどうぞよいお年をお迎えください (T)  
posted by kuyama at 12:55| くやま小児科だより・ブログ版 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする