2012年06月30日

小児科だより07月号(No149/2012/07)

晴れ今月の記事

◆病気や困難は育ちに必要

◆地域ではやっている病気

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◆病気や困難は育ちに必要

最近、妊娠中のサイトメガロウィルス感染症によって、生後重い後遺症を残すお子さんが増えている、という報道を目にしました。このウィルスは、実はほとんどの人が子どもの頃に感染し、症状もなく免疫を獲得するものです。
この話題から、日頃感じていることが思い出されましたので、皆さまにお伝えしたいと思います。

<乳幼児期の感染は、免疫に必要なこと>

人間の免疫が発達するには、3歳までに「感染」という刺激が必要です。それまでに感染の機会が少ないと、免疫が十分に育たず、感染に弱くなったり大人になっても必要な免疫がついていないことになります。
冒頭の、妊娠中の母子感染増加の問題も、サイトメガロウイルスに免疫を持たない妊婦が増えていることに起因しているのです。
またアレルギーが先進国で増えていますが、衛生的な生活により感染の機会が少なく免疫がアンバランスであることが原因の1つと考えられています。
感染の機会が多い、乳幼児から保育園に入った子どもでは、アレルギーが少ないことが実証されています。
親としては、風邪などの感染症はできたらかからせたくないものですね。
しかし病原体は人間の身体と共存(腸内細菌など)したり、共同作業で免疫を育てるプラスの役割も担当しています。近年清潔な環境によって乳幼児死亡は激減し、このことは喜ばしいことに違いありませんが、同じ理由から花粉症、喘息、アトピー性皮膚炎が増えているというのは、皮肉なことです。


<たくましさは多様な経験から>

免疫と同じように、成長のために乳幼児期の刺激が必要なものに、脳と神経の発達があります。
それを基礎に運動能力や社会性・情緒が育ってゆきます。
最近は運動能力が低下したり、多様な人とのかかわりが苦手な子どもが増えていますが、その理由に乳幼児期からの兄弟や友だちとの運動や遊びの機会が減ったことと関係があるとも言われています。
毎日の遊びや喧嘩は、運動能力や人間関係の調整能力をつける役割も持っています。
多様な刺激を取り込んでゆくことで、たくましさが育つという見方もできると思います。


<小児科医として最近感じること>

小児救急の当直をしていますと、軽症の患者さんが増えてきたように思います。
深夜に微熱や軽い咳だけで来院する方をこの1年よく見かけるようになりました。
働く親が増えて受診の時間帯が限られたり、育児経験が少く相談相手がない親が増えたことも理由にありますが、それだけではないように感じられます。
そのような方とお話をしていますと、病気を異物と見て、「かかってはいけないもの」と感じておられます。
そして症状はすぐに受診して取り除かなければいけないものと思っておられます。
基本的に、感染症は自分の免疫の力で自然に治るものです。
また、熱や咳などの症状は「治っていく」ための身体の自然な反応であり、薬で抑えるものではないことを、あらためて強調しておきたいと思います。
また、感染症は集団生活ではいつかかならず経験するものですが、うつしたりうつされたりすることを排除しようとすると保護的になりすぎて、乳幼児期のかけがえのない体験の機会を失うことになりかねません。
予防接種で防いだり隔離を要する病気以外はおおらかに受け入れていただければと思います。
このような、病気を過度に排斥する見方には、治療を勧めてきた私たち医療者に大きな責任があることも、最近よく感じるようになりました。


<先回りして防ぐよりもっと体験を>

子ども時代は、身体的にも精神的にも、その人の基礎をつくってくれるかけがえのない時期です。
この時期にしかできないことがあります。
「かわいい子には旅をさせろ」というように、先回りをして快適な環境を整備するより、多少の困難に立ち向かって自分で乗り越える経験を積み重ねること、いろいろな体験から異質なものを同化させる機会を与えることが、今の時代にはもっと必要に思います。


◆地域ではやっている病気

5月に続き、溶連菌感染症が目立ちました。
胃腸炎は6月に入って増加傾向です。
へルパンギーナ、咽頭結膜熱などの夏かぜはまだ多くはありませんが、出てきました。
高熱が出ますが特効薬はなく、自然に治ります。のどの傷みが強い時はのどごしのよい食事を与え、脱水にも注意しましょう。


◆ちび鉛筆

先日診察エリアのエアコンが突然故障/診察室に急遽扇風機を配置しました/今話題の羽のない扇風機/安全第一と少しミーハー気分もあり/子どもでなくても手を入れてみたくなりますね/エアコンは7月上旬には復活予定です/本格的な暑さの前で本当によかったです/今後は節電対策に扇風機も使います♪ (T)
posted by kuyama at 16:43| くやま小児科だより・ブログ版 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする