2013年04月30日

小児科だより05月号(No159/2013/05)

晴れ今月の記事

◆最近の気づき 〜高橋大輔選手のことばから

◆風疹流行と予防接種への助成

◆地域ではやっている病気

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◆最近の気づき 〜高橋大輔選手のことばから

開業して20年近く経ちますが、診療はいつも新しい発見に教えられる毎日です。最近またちょっとした気づきがありましたのでお話します。

<診断学と「開かれた質問」>

医療に診断学という分野があります。これは、症状→診察→検査という順番で病気を診断する、謎解きのスキルです。これができないと診療は始まらないので、診断のトレーニングは医師の日課です。
アメリカの診断学の本の中に「開かれた質問(open-ended question)」という聞き方が出てきます。これは、患者の自由な話を医師がさえぎらずにじっと聞くというもので、医師の方からの焦点を絞った質問はこの質問の後に行われます。アメリカの4倍の患者を見る日本の忙しい医療現場では、わかっていてもなかなか実行が困難です。

<病気とその人は切り離せない>

医師が診断学を学ぶのは、様々な訴えを、病名と結びつく特定の症状で捉え直し、整理するためです。
病気を的確に診断・治療するためには、もちろん類型化は必要ですが、病気の背後には必ずその病気を持った人間がいます。
病気をその人から切り離して「病名」や「治療」だけで固定して見ると、見落としも含めて切り捨てられるものが出てきます。
「開かれた質問」は、そんな先入観を排し、患者さんの全体像に迫って、より的確で個別的な診療につなげるために大切な姿勢なのです。

<失敗から学んだ高橋選手の言葉>

そんなことを思いながら、先日新聞を見ていた時に、今期浮き沈みしつつも大活躍した、フィギュアスケートの高橋大輔選手の素晴しい談話に出会いました。

「失敗は考え直せるチャンス。失敗や無駄が良くないという考え方が子どもの成長の芽を摘み、時に体罰に結びつく。
何でも今すぐ結果を求めなくていい。どこで生きてくるかはわからないから。」


これは彼が自分の体験から、スケート教室で子どもやその指導をする人たちに向けて語った言葉ですが、親や教師にとっても届いてくるお話ですね。
これを読んで、私の中ではふと、「開かれた質問」の話が結びつきました。


<受入れることからスタートする>

慢性の病気や治療が困難な病気の方を長く拝見していると、その向き合い方は一人一人違います。また、同じ人でも迷いがあったり、成長や環境の変化で変わってゆきます。それは医師の側からは「失敗や間違い」と見えることもよくあります。でも病気は他に替わることのできない一人一人が背負っているものですから、医師はまず患者さんを受入れることから始めなければいけません。
アメリカの診断学で「開かれた質問」が最初にあがるのは、患者さんをまず丸ごと受入れることがスタートだ、という意味でもあるのでしょう。

よい選手-指導者関係のように、失敗したり迷ったりすることを含めて丸ごと受入れ、一緒に病気や障がいと向き合っていく関係、これを心がける医師でありたいと改めて感じた、「大ちゃん」の記事でした。


◆風疹流行と予防接種への助成

全国的に流行が広がり、妊娠中の女性が罹患すると、流産や先天性風疹症候群(心奇形、難聴、白内障など一生障がいが残る)をきたすことがあります。
この流行は、過去に導入された混合ワクチンが中止になったり、女児だけに限定されていた時期があり、免疫をもたない成人男性層を中心に広がっており、今後も長期化が予想されます。
このため国は、免疫をもっていないと思われる方、特に妊娠を希望する女性、妊婦の夫、20代以上の男性にワクチン接種を呼びかけています(妊娠中の方は受けられません)。
県下では、予防接種の助成制度が進みつつあります。
印西市でも6月13日の議会で承認の見込みです。対象者や金額等は確定していませんが、風疹またはMRワクチンを接種した人は、接種済証とその費用とわかる領収証を保管しておいてください、とのことです。
詳しくは、今後お住まいの市町村の広報等を注意してご覧になってください。
なお、大変申し訳ないのですが、当院ではお子さんのワクチン接種も1ヶ月待ちが続いており、大人の方には対応できません。内科などにご相談くださいますよう、お願いいたします。

★参考になるサイト★
「ストップ風疹〜赤ちゃんを守れ」NHK NEWSweb
「厚生労働省」
「VPDを知って子どもを守ろう」


◆地域ではやっている病気

4月に入ると花粉症も落ち着き、春休みで感染症も少なくなりました。
中旬からは保育園や幼稚園の新入園児を中心に、カゼや胃腸炎などが増えてきています。
毎年この時期にお話することですが、初めて集団生活に入ると、しばらくは感染症をうつしうつされします。免疫がつきだんだん丈夫になっていく、大切な成長の1つの過程です。あまり気に病まず大らかに見守ってあげましょう。


◆ちび鉛筆

くやま小児科だより13年の歴史で/スポーツ選手が登場したのは初めてです/診断学とはやや強引に関連づけた感がありますが/物事を極めた人の言葉には/年齢に関係なく重みがありますね/ソチ・オリンピックでもご活躍を期待しております (T)
posted by kuyama at 18:23| くやま小児科だより・ブログ版 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする