2016年06月28日

小児科だより07月号(No197/2016/07)

今月の記事
◆アトピー性皮膚炎のおはなし
 〜治療の新しい考え方について

◆地域ではやっている病気

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◆アトピー性皮膚炎のおはなし
 〜治療の新しい考え方について

「アトピーなので、食事制限が必要?」
「妊娠中、卵や乳製品を控えた方がいいのかしら?」
これは、現在では基本的に必要ないとされています。

<食物アレルギーは原因ではなく、結果?!>
アレルギーとは、異物に対する免疫反応でしたね。
アトピー性皮膚炎は、以前は食物アレルギー(経口感作)が大きな原因と考えられてきましたが、実は皮膚炎が先にあって、食物アレルギーが後から合併する順序であることがわかってきました。
食べる経路はアレルギーを抑え(経口免疫寛容)、皮膚からの経路はアレルギーを作る(経皮感作)というメカニズムが明らかになっています。

少しわかりにくいので、具体例を出してみましょう。
乳児期にピーナツオイルの保湿剤を使っていた国と、ピーナツを食べさせる習慣のある国を比較すると、ピーナツオイルを皮膚に塗る習慣のあった国の方が、ピーナツアレルギーが多かったという報告があります。
日本でも、小麦を食べても異常のなかった人が、ある種の小麦成分を含んだ石鹸を使い続けることで小麦アレルギーを発症する人が続出し、問題になったことがありました。(経皮感作)

<新しい「原因と治療」の考え方>
皮膚の未熟、皮膚のバリア機能の異常、アレルギー(ダニ、ホコリ、カビ)、物理的刺激(衣服の刺激、食べかすなど)、洋風食生活などのさまざまな組み合わせが原因と考えられています。
乳幼児のアトピー性皮膚炎は、中学生頃になると大部分が自然によくなり、原則治らない成人型とは異なります。
これは肌の「潤い」と性ホルモンに関係があるためで、肌が潤う年齢には自然によくなることが期待できるので、根治を急がずスキンケアや原因除去を続けることが治療の基本となります。
食物については、一部を除いて制限は原則行わず、「食べて治す」という考え方になっています。
スギ花粉症の治療でも、スギ花粉エキスを含ませたパン片を経口摂取する方法がありますが、これも「経口免疫寛容」の考え方に基づいた治療です。

<診断は、アレルギー検査より「症状」で行う>
症状により、具体的には診断基準(「日本皮膚科学会・アトピー性皮膚炎ガイドライン」など)と重症度基準(「POEM」など)を組み合わせて行います。
アレルギー検査は診断後の治療の参考程度であり、現在は積極的には行われません。
他に重症度の評価として、TARCという血液検査があります。

<治療のポイントは「スキンケアと根気」>
アトピー性皮膚炎の特徴は、根治する治療法がないことと、再発が多いことです。
治療にあたっては短期的に「治す」のではなく、長い目で「つきあう」という態度が必要です。
治療はスキンケア・保湿(保護)とステロイド軟膏(炎症を抑える)の組み合わせです。
医師の立場から見ると、少し良くなると手を抜いたり、中断して悪化する方がとても多いのが残念です。
保湿を中断してカサカサ肌になると、皮膚のバリア機能が低下し、炎症が再発して悪循環になります。
炎症がおさまっても、さらに根気よくスキンケアを続けることで、どなたもかなり良くなるはずです。 

<スキンケアと治療の実際>
具体的には症状に合わせ、診察室でご説明しますので、ここでは項目をあげておきます。
1)スキンケア
 ・刺激(衣類、よだれ、汗など)を除去
 ・清潔の保持
 ・保湿(乾、燥と刺激から肌を守る)
  重要なのはどの薬を使うかではなく、塗る回数。
  「取れたらその都度塗る、たっぷり塗る」

2)抗炎症薬(ステロイドと免疫抑制剤)
 ・副作用もきちんとチェックしつつ、完全にきれいになるまで、しっかり使う。
  中途半端にやめると、かえって量が増える結果に。
 ・「リアクティブ療法」と「プロアクティブ療法」の併用

3)和食を心がける、漢方薬など

皮膚のはたらき、炎症の原因、治療の意味をよく理解することで、前向きに取り組むことができます。
わからないこと、不安なことがあれば、納得のいくまでお尋ねください。


◆地域ではやっている病気

6月も感染症は少なく外来は落ち着いていました。これからの時期はヘルパンギーナや咽頭結膜熱などが出てきます。ウイルス性のいわゆる「夏カゼ」で、治療薬はありませんが、高い熱のわりに症状は軽いことが多いです。
蚊が媒介する感染症も気になりますが、野外活動のときは肌の露出を少なくしたり、虫除けなどを用意するとよいでしょう。


◆ちび鉛筆

じめじめした日が続きます/そんな中ひときわ美しいのが紫陽花/最近はいろいろな種類が庭先や街中で見られ/その色や形で目を楽しませてくれます/学名Hydrangeaは「水の器」の意味とのこと/バラのように品種ごとに名前もあり奥深い世界のようです(T)
posted by kuyama at 15:39| くやま小児科だより・ブログ版 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする