2019年04月14日

「授乳・離乳の支援ガイド」2019年版について<くやま小児科だよりNo230/2019/04>

新学期が始まりました。ご入園ご入学、そして進級された皆さん、おめでとうございます。
喜びの中にもちょっぴり緊張もある季節。小児科の窓からも、エールを送っています。

さてこの3月、「授乳・離乳の支援ガイド」2019年改訂版なるものが厚労省より発表されました。
「新ガイドで母乳神話はなくなるのか」などとネット上でも話題になり、関心をもった方もいるかもしれませんね。
ここでは、その中から母乳育児を取り上げ、小児科医の立場から考えてみたいと思います。

<支援ガイドとは?>
このガイドは、妊産婦や子どもに関わる保健医療従事者を対象に、一貫した支援が行われるよう、2007年に厚生労働省が作成したものですが、それから10年以上が経過し、その間の新しい知見や、近年の子育てをとりまく状況に基づいて改訂版が作られました。

今回の改定では2007年版と同様に基本的に母乳育児を推奨していますが、様々な理由で母乳育児を選択しない方への支援について、より具体的に示したことと、母乳にアレルギー予防効果はないことを明確にした点が注目されます。
また、東日本大震災を機に、災害時の母子の支援についての実践や研究が取り上げられたことも特徴と言えるでしょう。
厚生労働省のページ
改定のポイント

<母乳育児の推奨>
母乳育児は優れている点が多く、今回のガイドでも母乳育児を第一に勧めています。
母乳の利点としては、
1)人間の乳児の体に栄養的にも消化にも最も適している
2)感染症の予防と重症化を防ぐ効果がある
3)小児の肥満や将来の糖尿病のリスクを減らす
4)産後の母体の回復を促進する
5)良好な母子関係を作る   
が挙げられています。
なお3)については、完全母乳栄養と混合栄養では肥満の発症に差があるという証拠はなく、ミルクを少しでも与えると肥満になるという誤解がないように、との注釈がつけられています。

<育児用ミルクについて>
前回のガイドが作成された当時は、母乳育児のさらなる普及が目的の1つでした。
母乳で育てたいと考えるお母さんの割合は10年前も今回も9割ほど。これに対し、生後3ヶ月時点で混合栄養を含めた母乳育児の割合は、この10年間で11.7ポイント増加し、89.8%となっています。母乳育児をとりまく状況が、よい方向に進んできたように思えます。
一方で、現在育児用ミルクで子育てしている保護者の中には、母乳の利点を十分理解しながらも、やむを得ない事情で使用している方が少なくないと考えられます。
そこで今回の改定では、母乳育児の推奨だけでなく、育児用ミルクを使用している方々にも不安なく子育てしていただけるように配慮する方針となっています。
現在の育児用ミルクは優れたものですので、当院の健診でも、ミルク育児を選ばれている保護者には、育児に満足と自信を持っていただくよう心がけています。

<母乳にはアレルギーを防ぐ効果はない>
母乳にはアレルギーを防ぐ効果があるとする意見がありましたが、その後の研究より「6ヶ月間の母乳栄養は、小児期のアレルギー疾患の発症に対する予防効果はないと結論」しています。
また「母親が妊娠中や授乳中に特定の食品を避けたりサプリメントを過剰に摂取することは、子どものアレルギーを減らすことにつながらない」とし、食物アレルギーが疑われる場合には、医師の診断に基づいた対策をとるよう勧めています。

<乳児用液体ミルクについて>
欧米で普及している乳児用液体ミルク(容器に密封した液状の人工乳)ですが、日本でも国内製造や販売を可能にする許可基準が定められ、2019年3月に発売開始されたことを受けて、取り上げられています。
乳児用液体ミルクは、常温での長期保存が可能、調乳の手間がない、手軽に飲むことができる、という利点があって、災害時や深夜の授乳時、外出時、調乳に不慣れな方に赤ちゃんを預ける時などの用途があります。


この10年でいろいろな進歩がありました。
母乳で育てたい親御さんの希望がより叶うようになってきたことは喜ばしいことです。
一方で、様々な事情でできない方も、その意思が尊重され、自信を持って育児をしていただけるようにと願います。
育児は生活の一部であり、生き方でもあるのですから、専門家は何かを押し付けるのではなく、それがよりよいものになるよう、励ましお手伝いする姿勢でありたいものです。
posted by kuyama at 11:37| くやま小児科だより・ブログ版 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする